年間で優れた功績を収めたカメラマンを称え、表彰するLovegraphers AWARD。
前回の記事では、年間最優秀賞を受賞された石川善一郎さんを取材しました。
本記事では、Best Love賞(※最も人を愛する余裕を持ち、人から愛され、人を巻き込める人間力を称えた賞のこと)を受賞された原田祐紀さんをご紹介します。
中国四国地方を中心に活動し、ラブグラフのカメラマン育成プログラムLGC(※「LoveGrapher Creation」の略称)でチーフトレーナーも務める彼から、様々なお話をお伺いしました。
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■ 「学校の先生をやめてカメラマンになる」〜最年長カメラマンの挑戦
——Best Love賞の受賞おめでとうございます。原田さんは元々カメラマンとして活動していたのでしょうか?
原田さん:いえ、元々カメラマンとして仕事をしていたわけではありませんでした。ほんの数年前までは、学校の先生でした。ただ、写真がグッと好きになったのは間違いなく教員生活での経験からですね。
僕は何らかの障がいがある子どもたちの通う特別支援学校の先生をしていたのですが、彼らはご両親に「今日はこんなことがあったよ」と伝えることが難しかったりするんです。
その時に、子どもたちがどんな活動をしているのか、もっと知りたいだろうなと思い立ち、彼らのいきいきとした表情や楽しく活動する姿を撮影し、ご家庭に届けていったんです。
「原田先生が作ってくれた学級通信は、この子の学校生活のアルバムそのものです。ありがとうございました」と卒業式の日に伝えられたことを今も思い出しますね。
——そういった経験から、カメラマンとして活動することに興味が湧いたのでしょうか?
原田さん:そうですね、自分の写真で誰かが喜んでくれることが、何よりもうれしいことでした。
ところで、我が家はお寺でして、長男である僕がそろそろ住職を担う時期かな、と考えていたのと、その頃には写真にすっかりのめり込んでいて、「もっと多くの人に、僕の写真で喜んでほしい」と、気持ちが膨れ上がっていたのもあり、23年間務めた特別支援学校教員を退職し、お寺の住職兼フリーランスのカメラマンとして活動を開始しました。
——それは大きな決断ですね……!
原田さん:はい、「学校の先生を辞めてカメラマンになる」という決断は勇気のいるものでした。
しかし、新しいことにチャレンジしたいという気持ちも抑えることはできず、家族の理解と応援もあって、この世界に飛び込みました。
ラブグラフを知ったのはちょうどその頃なのですが、「幸せな瞬間を、もっと世界に」というビジョンが、僕の撮りたい写真への思いとピッタリだ!と確信し、ラブグラフでは最年長のカメラマンとしてジョインさせていただきました。
■ 「思い通りにならないときこそがチャンス」〜成長を諦めない心構え
——カメラマンになってから、大事にしている心構えはありますか?
原田さん:写真に限らず、選択肢が2つあった時、自分にとってより難しい方の道を選ぶようにしています。
例えば、ゲスト(ラブグラフでは、お客さまのことを「ゲスト」とお呼びします)が夕陽をバックにしての撮影を希望していたのにもかかわらず天候が急変、ベストではない状況で撮影しなければならなくなったとします。
日を改めて撮り直すこともできるかもしれませんが「雲がかかっている写真もよかったよね」「これもいい思い出だったね」と言ってもらえるように、あらゆる手段を尽くす努力をしています。
困難や思い通りにならない時の方が、自身をアップデートできるチャンスだと思っていて、そういう経験は積極的に掴みに行くようにしていますね。
ハイリスクそのものがいいとは思いません。しかし、そう思う方が、結果的に自分を成長させるきっかけになっている気がします。
■ 「一緒の目線になって喜ぶ」〜講師として心がけていること
——活動を続けていく中での転機となったことはありますか?
原田さん:最近では、LGCというカメラマンを採用するプログラムの講師や、管理者としても活動しています。
より多くの方にラブグラフを楽しんでいただいていけるよう、カメラマン採用にも力を入れていく機運が高まったため、協力を立候補し、講師として関わることになりました。
——カメラマンと講師の活動に共通点はあるのでしょうか?
原田さん:なんだろう……そうですね、僕は何をするときでも「一緒に喜ぶ」ことを大切にしていて、カメラマンとしていい写真が撮れることはもちろんうれしいのですが、それ以上にゲストにとって素晴らしい写真が撮れたとき、それを見てゲストが喜んでいる姿を見ると、僕までうれしくなるんです。
「やった!すごいのが撮れましたね!」と、自然とゲストと一緒の目線になって喜んでしまう。
生徒に教える際も、同様で、彼らができなかったことができるようになると、やっぱり僕も自分のことのようにうれしいんですよね。こういう立場としてもラブグラフに関わることができるのは、非常にありがたいことです。
——素晴らしいですね……!写真について教える際、難しく感じることはありますか?
原田さん:幸い、教え方のエッセンスもたまり出したおかげで、短期で実力を底上げすることはできるようになってきています。しかし、それを突き詰めると、生徒自身の持つ個性のところは引き出しにくくなってしまうとも言えます。
僕らはそういった「ついついやってしまう悪い癖」を矯正するところから指導を始めますし、その矛盾に関して考えることもあります。
ただ、そこはやはりゲストあってのカメラマンです。
ですから、「ゲストの求める写真を撮る」ということはきちんと貫いていきたいと思っています。
自分らしさや個性に悩むのも大切ですが、まずは誰かの期待に愚直に応えていく。その中で、いずれ滲み出ていくものではないだろうかとも考えています。
■ 「大好きだけが、僕を突き動かす」〜変わらない思いと原動力
——Best Love賞を受賞したことへの率直な感想をお聞かせください!
原田さん:この1年間は、LGCの講師という新たな役割も加わり、より一層自身の立ち振る舞いに気を遣うようになりました。ものを教える立場になったのですから、当然、生徒や他のカメラマンに対しても、お手本のような行動を心がけなくてはなりません。
それはある意味、不安なことでもありました。そんな自分がどう見られているかというのは、案外自身には届かないものですから。
ただ、このBest Love賞をいただき、評価として見えてきたことで、少しほっとしている部分もあります。
また同時に、自分の中での一つの確信も見えてきました。
それは、自らを取り巻くあらゆる人々のことを、僕はとにかく愛していたいのだな、ということです。
ゲストはもちろん、カメラマンや、LGC生のみなさんも、本当に大好きで、その「大好き」だけが、僕を突き動かしているのだと思います。
——これから自分が成し遂げたいこと・テーマに掲げたいことは?
原田さん:もちろん、この賞をいただいて甘んじるつもりもありません。自身の撮影技術や表現力を磨いていくことは、「撮る人間」としての宿命でしょうから。
また、これまでLGCを経てカメラマンになった方は現在260名ほどいらっしゃいますが、これにとどまらず、もっとラブグラフのビジョンに共感できる人を輩出し、また活躍していけるようなプロダクトにしていきたいですね。
——ありがとうございます。最後に、未来のラブグラフのカメラマンの方に向けて、何かメッセージをお願いいたします!
原田さん:Best Love賞という光栄な賞をいただきましたが、それは僕だけの話ではなく、ラブグラフのカメラマンはみんな、ゲストやお互いのことを愛している方ばかりです。
だから、もしラブグラフでの活動に興味がある、という方は、そんなラブグラフのカメラマンにいつか会いにきてほしいです。
会ってみれば、話してみれば、彼らの何が魅力で、何を大切にしているのかがわかると思います。
このご時世ですので、直接みなさんにお会いできるのは、少し先の未来になってしまうかもしれませんが、幸い今ではオンラインでいつでもどこでも会話ができるような環境は整っています。
現在開講しているラブグラフのオンライン写真教室に参加していただくのもよいですし、気軽にご連絡いただければと思います。
いつかお会いできることを、心からお待ちしております。
——原田さん、この度はありがとうございました!